自閉症・自閉症スペクトラム障害の最新治療法・研究結果の紹介

自閉症・自閉症スペクトラム障害の、現在の自閉症・自閉症スペクトラム障害の最新治療法・研究結果をご紹介します!

自閉症・自閉症スペクトラム障害の最新治療法をご紹介!

自閉症・自閉症スペクトラムの原因は、生まれつきの脳障害に加えて、成長過程での化学物質などとの関連も考えられていますが、しっかりとした原因は特定できていません。遺伝子レベルで原因特定・治療法の発見のため、研究が行われています。

これまで、個々のケースに対応した治療として、カウンセリングや環境調整、薬物療法などが行われてきました。

本ページでは、自閉症・自閉症スペクトラム障害の方に対して行われている最新の治療法や研究結果をご紹介します。

自閉症・自閉症スペクトラム最新治療法その1~経鼻スプレー~

オキシトシンの投与

この治療法は、自閉症・自閉症スペクトラムにおける、対人コミュニケーション障害の改善を期待して研究されているものです。

投与されるオキシトシンは、人間の脳の「下垂体後葉という部分から分泌されるホルモン」であり、これを経鼻スプレー(鼻にスプレーをして内服する薬)を用いて投与します。

研究・臨床試験の結果として現在わかっているのは、

・△:対人コミュニケーションの障害に対する効果はあまり認められなかった。
・〇:常同行動(同じ行動を繰り返すこと)や限定的な興味に対する効果は認められた。
・〇:自閉スペクトラム症の方特有の表情の特徴が改善する効果が認められた。

とのことです。

最新の研究結果・発表(令和元年5月17日発表)では

この、オキシトシン投与により、自閉症の人特有の、中立表情(人と話したりやり取りするときの表情に変化がない、笑顔が出にくい)が緩和されたとのこと。

きちんと、プラセボ(薬を飲んだらよくなる!という思い込みによる改善効果)の影響を考慮して、オキシトシンを含まないニセの薬を与えた方との比較実験を行った結果です。

参考記事:オキシトシン治療で表情が豊かに?―自閉スペクトラム症の改善効果とその経時変化―

今後も臨床試験を続け、オキシトシンを治療薬として使うことが期待されているようです。

自閉症・自閉症スペクトラムの最新治療法その2~腸内環境で治す~

腸内フローラを改善する

最近の研究において、自閉症の人と健康な人では腸内にいる細菌の種類(腸内フローラ)が違うことが分かりました。

この違いにより、自閉症の人は排便障害(便秘・下痢など)が多いそうです。

薬品(プロバイオティクスとビタミンD)を投与したり、糞便微生物移植(FMT)を行うことで、腸内フローラは改善されるようです。

糞便微生物移植(FMT)とは、健康な人の便から腸内細菌を取り出し、自閉症の人の腸に移植する方法です。

〇:薬品投与もFMTのどちらでも、自閉症の症状が改善される効果が得られたようです。

Radical Fecal Transplant Therapy in Kids Has Reduced Their Autism Severity by 47%
こちらは、英語の研究成果の記事なります。日本語訳にするとタイトルは「小児において根本的・極端な・先進的な便移植療法により、自閉症の重症度が47%減少しました」になります。

この研究内容の発表では、

★糞便微生物移植を行った8割の自閉症の子供たちの胃腸にかかわる問題が減少・自閉症症状も改善傾向。
★腸内の菌を調べたところ、2年後の検査でもきちんと菌が定着していたとのこと
★研究チームは、自閉症に効果的な腸内細菌の投与量を発見。
★糞便微生物移植を行う前と後で自閉症の子の重症度の割合が47%も減少した
★副作用も少ない

とのこと。

自閉症・自閉症スペクトラムの最新治療法その3~音楽療法~

パニックが起こった時は…音楽療法

自閉症・自閉症スペクトラムの症状の一つとして、行動の予測が難しい事が挙げられ、いつもと違うことが起こるとパニックを起こす事もあります。

その時は、通常、安全な場所に移動させて見守るのですが、この時、クラシック音楽などを流すとパニックが収まることがあるようです。

音楽は感覚に訴えるので、音などへの刺激に敏感な自閉症の人には効果的な可能性があります。

ただ、はっきりと効果がみられるという論文はありません。「一定の効果があるようだ」とする論文もあれば「音楽療法の効果は症状改善にほとんどつながらなかった」という論文もあります。


「一定の効果があるようだ」とする研究論文はこちら

自閉症スペクトラムに対する音楽療法によると、音楽療法は「プラセボ」療法や標準的治療に比べて、165人参加の研究により、社会的な相互交流、非言語的および言語的コミュニケーションスキル、働きかけ行動および社会・情動的相互性の点で優れていた。

とのこと。この実験では、音楽療法を加えると、音楽療法を行わない「プラセボ」療法や普通の治療に比べて効果が高かったとのこと。副作用は認められなかったとのこと。

試験参加者が少ないことなどから、確実に効果があるとは述べず「どうやら音楽療法は一定の効果があるようだ」のレベルにとどまっています。


「音楽療法の効果は症状改善にほとんどつながらなかった」とされる研究論文はこちら
Music Therapy for Children With Autism Spectrum Disorder
この研究論文によると、384人に対し、無作為に3つのグループにわけ、標準なケア、週3回の音楽療法、週1回の音楽療法を行い、5か月後に効果を調査。しかし、残念ながら「音楽療法の効果は症状改善にほとんどつながらなかった」と述べています。医師はどのグループなのかを知らされていないため、医師の勝手な思い込みによる影響が取り除かれている研究結果です。

ただ、音楽療法は副作用はほとんどないことがわかっているため、試してみる価値はありそうです。

自閉症・自閉症スペクトラムの最新治療法その4~鍼療法~

東洋医学は効果があるのか?鍼療法

鍼(はり)療法は、中国伝統医学では重要な治療法です。

自閉症・自閉症スペクトラムの小児を対象に研究が行われましたが、
×:改善の効果はあまり認められなかったようです。
しかし、△:コミュニケーション能力の改善が認められた報告もあった
ようで、これからの研究が期待されるところです。

自閉症・自閉症スペクトラム障害の最新治療法をご紹介!まとめ

現在の自閉症・自閉症スペクトラム障害の最新治療法をご紹介しました。

●経鼻スプレー
●腸内環境で治す
●音楽療法
●鍼療法

これらの治療法は効果があったり、なかったり…まだまだ研究段階のようです。可能であれば、医師と相談の上、いろいろと試してみるのも良いかもしれません。

自閉症・自閉症スペクトラムの症状には個人差があるため、まったく効果がない方もいれば、劇的に改善する方もいるようです。

ご紹介した最新治療法が、少しでも症状緩和につながってくれることを願うばかりです。

療育などを積極的に

新しい治療法により、自閉症・自閉症スペクトラムの症状が劇的に改善されれば…と、誰しも期待してしまいますが、最初に述べたように、多くの自閉症・自閉症スペクトラムの方に有効な根本的な治療法はまだ存在しません。

現在も行われている療育や環境調整を行い、時にはパニックを抑える薬など、症状を緩和するための薬を用いながら、新しい治療法もチェックしたり、試していくとよいのではないでしょうか。

管理人